エイミー・コニー・バレット

エイミー・コニー・バレット
Amy Coney Barrett
アメリカ合衆国の旗 連邦最高裁判所陪席判事
現職
就任
2020年10月27日
任命者ドナルド・トランプ
前任者ルース・ベイダー・ギンズバーグ
アメリカ合衆国の旗 第7巡回区控訴裁判所判事
任期
2017年11月2日 – 2020年10月26日
任命者ドナルド・トランプ
前任者ジョン・ダニエル・ティンダー(英語版)
個人情報
生誕Amy Vivian Coney
(1972-01-28) 1972年1月28日(52歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ
配偶者ジェッセ・バレット (m. 1999)
子供7人(うち養子2人)
教育ローズ・カレッジ(英語版) (BA)
ノートルダム大学 (JD)
エイミー・コニー・バレット
学問
研究機関 ノートルダム大学ロースクール
公式サイト
Notre Dame Law Biography
テンプレートを表示

エイミー・コニー・バレット (Amy Coney Barrett、1972年1月28日 - )は、アメリカ合衆国裁判官法律家。同国の控訴裁判所(高裁)判事などを経て2020年10月27日より合衆国最高裁判所陪席判事を務める。

来歴

1972年1月28日、ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。父方の高祖父がアイルランド出身で、母方の高祖父がフランスの出身である。ローズ・カレッジ卒業、ノートル・ダム・ロー・スクール修了[1]。保守派で最高裁判事のアントニン・スカリアの下で調査官を務めた。また母校を含めた複数の大学において法学を教えている[2]

両親共にカトリックの家柄であったことも影響し敬虔なカトリック教徒であり、人工妊娠中絶を不道徳なものと考えるなどアメリカ合衆国において保守的な立場とされる[3]。2013年には雑誌記事上で、命は受胎の時に始まるとの見解を示し、人工妊娠中絶を批判した。また2012年に最高裁が下した、バラク・オバマ政権による医療保険制度改革(通称、オバマケア)を支持する判決に批判的な立場である。一方でドナルド・トランプ大統領が行った移民規制政策や、銃規制緩和に対しては支持を表明している[2]

2017年5月、トランプ政権下で第7巡回区控訴裁判所判事に指名。上院司法委員会による公聴会では、野党、民主党の議員よりドグマが大きく響いていると批判された際、自身の司法判断と信仰心は切り分けていると反論した。結局、同年10月に上院本会議で賛成55、反対43で承認された[2]

最高裁陪席判事

2018年6月に中道派のアンソニー・ケネディーが最高裁判事からの引退を表明。このときはブレット・カバノーが判事に補充されたが、この頃からトランプはバレットを最高裁判事に据える人事を見据えていたとされている[2]

2020年9月18日にルース・ベイダー・ギンズバーグ陪席判事が死去したことに伴い、9月26日、ドナルド・トランプ大統領がバレットを同職へ指名した。式典でトランプはバレットについて卓越した知性と気質を備えた、最高裁陪席判事に極めて適格な人物であると評した。しかしリベラル派の象徴であったギンズバーグの後任に保守派のバレットが指名されたことで、既に保守派5人、リベラル派3人と保守派が上回っていた最高裁判所の保守傾向がさらに強化されるとも懸念された。トランプと次期大統領を争っていた民主党のジョー・バイデンは1カ月半後に迫っていた大統領選挙の勝者がギンズバーグの後任を指名するべきであると主張した。[3]。いずれにせよ承認に必要な採決を行う上院は共和党が多数派であり、承認される可能性は高かった。

この人事案の承認に必要な公聴会が2020年10月12日より上院司法委員会にて開催された。その中でバレットは、事前に提出した冒頭陳述の中で、裁判所に対し政策決定や政治的判断を求めるべきではないと指摘し、自分自身の政治的、宗教的立場に基づき司法判断は行わないと強調した[4]。翌13、14日には議員からの質問が行われ、人工妊娠中絶やオバマケア、性的少数者/LGBTQの権利などについての質問については、これまでの判決について個人的な意見を表明するのは不適当とした上で、法の支配を重視し、他の判決を覆そうという意図はないと述べるにとどまり、直接的に見解を示さず、回答を回避した[5]。但し、オバマケアについては、これを破壊する意図はないと言明した[6]。又、11月の大統領選挙の結果が最高裁の場で争われることになった場合、その協議に加わらないと誓うことを拒否。不適格者を定めた法律には従うと述べた一方、法的結論を今すぐには示せないと述べた[5]。15日には外部有識者による審議が行われた。

10月16日に公聴会は予定通り終了し[6]、22日の委員会採決を前に民主党はボイコットを表明したものの共和党は予定通り行うと表明[7]。結局、民主党が欠席する中、上院司法委員会は人事案を可決し本会議に送付[8]。26日の上院本会議において賛成52、反対48で承認を受け、翌27日の司法宣誓を経て就任した[9][10]。共和党からの造反は、大統領選挙直前の承認採決に以前から批判的だったスーザン・コリンズ1人にとどまった[11]

家族

家族でトランプ大統領(当時)と面会するバレット。

夫はノートルダム大学ロースクール時代に出会い、インディアナ州の連邦検事を務めたジェッセ・バレット[1]

7人の子供のうち、2人はハイチ出身の養子である。また夫妻の間に生まれた一番下の子供は、ダウン症候群を患っている[2]

信仰

宗教団体である崇拝の人々(en:People of Praise)[12] のメンバーとして知られる[13][14]

脚注

  1. ^ a b “Who Is Amy Coney Barrett's Husband, Jesse Barrett?”. ニューズウィーク. (2020年9月26日). https://www.newsweek.com/who-amy-coney-barrettshusband-jesse-barrett-1534376 2020年10月28日閲覧。 
  2. ^ a b c d e “トランプ氏、後任の最高裁判事に48歳女性指名へ 人工中絶反対の保守派”. BBC News. BBC. (2020年9月26日). https://www.bbc.com/japanese/54306061 2020年10月27日閲覧。 
  3. ^ a b “トランプ大統領、エイミー・バレット氏の米最高裁判事指名を発表”. bloomberg.co.jp. ブルームバーグ. (2020年9月27日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-26/QHAAY9T1UM1001 2020年10月27日閲覧。 
  4. ^ “バレット最高裁判事の指名承認公聴会始まる”. 産経新聞. (2020年10月12日). https://www.sankei.com/article/20201012-MFPPP7ZYMVMQTC4EY32JWXOC74/ 2020年10月27日閲覧。 
  5. ^ a b “米最高裁判事に指名のバレット氏、中絶などで見解示さず 公聴会2日目”. BBC News. BBC. (2020年10月14日). https://www.bbc.com/japanese/54534393 2020年10月27日閲覧。 
  6. ^ a b “米上院、最高裁判事候補の公聴会終了 22日に委員会採決”. 日本経済新聞. (2020年10月16日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65071480W0A011C2EAF000/ 2020年10月28日閲覧。 
  7. ^ “米共和党、最高裁判事承認の上院委採決強行へ 民主はボイコット表明”. ロイター. (2020年10月22日). https://jp.reuters.com/article/usa-court-barrett-idJPKBN2763EA 2020年10月28日閲覧。 
  8. ^ “米最高裁判事の人事 上院司法委員会 民主党側欠席の中で承認”. NHK NEWSWEB. NHK. (2020年10月23日). https://web.archive.org/web/20201024091310/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201023/k10012676841000.html 2020年10月28日閲覧。 
  9. ^ “保守派の最高裁判事就任 トランプ氏、米大統領選へアピール”. 時事ドットコム. 時事通信社. (2020年10月27日). https://web.archive.org/web/20201029165840/https://www.jiji.com/jc/article?k=2020102700230&g=int 2020年10月28日閲覧。 
  10. ^ “Associate Justice Amy Coney Barrett sworn in and greeted with a request to recuse herself in an election case”. CNN.com. CNN. (2020年10月27日). https://edition.cnn.com/2020/10/27/politics/justice-amy-coney-barrett-sworn-in-supreme-court/index.html 2020年10月28日閲覧。 
  11. ^ “米最高裁判事に保守派バレット氏就任、共和党造反1人のみ”. CNN.co.jp. CNN. (2020年10月27日). https://www.cnn.co.jp/usa/35161518.html 2020年10月28日閲覧。 
  12. ^ https://www.bbc.com/japanese/54313412 トランプ氏、米連邦最高裁判事に保守派エイミー・コーニー・バレット判事を指名 - BBCニュース]
  13. ^ 米最高裁判事に指名のバレット氏、カルト信者の噂は本当か?  | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)
  14. ^ 「民衆の称賛」は「カルト」団体、米国連邦最高裁判所判事の最有力候補エイミー・バレットとつながりのある元会員が明かす|Democracy Now!


 
  1. ジョン・ジェイ (1789–1795(英語版)判例(英語版))
  2. ジョン・ラトリッジ (1795(英語版)判例(英語版))
  3. オリバー・エルスワース (1796–1800(英語版)判例(英語版))
  4. ジョン・マーシャル (1801–1835(英語版)判例(英語版))
  5. ロジャー・B・トーニー (1836–1864(英語版)判例(英語版))
  6. サーモン・P・チェイス (1864–1873(英語版)判例(英語版))
  7. モリソン・ワイト(英語版) (1874–1888(英語版)判例(英語版))
  8. メルヴィル・フラー(英語版) (1888–1910(英語版)判例(英語版))
  9. エドワード・ダグラス・ホワイト (1910–1921(英語版)判例(英語版))
  10. ウィリアム・ハワード・タフト (1921–1930(英語版)判例(英語版))
  11. チャールズ・エヴァンズ・ヒューズ (1930–1941(英語版)判例(英語版))
  12. ハーラン・F・ストーン (1941–1946(英語版)判例(英語版))
  13. フレッド・M・ヴィンソン (1946–1953(英語版)判例(英語版))
  14. アール・ウォーレン (1953–1969(英語版)判例(英語版))
  15. ウォーレン・E・バーガー(英語版) (1969–1986(英語版)判例(英語版))
  16. ウィリアム・レンキスト (1986–2005(英語版)判例(英語版))
  17. ジョン・ロバーツ (2005–現職判例(英語版))
 
  1. J・ラトリッジ* (1790–1791)
  2. クッシング (1790–1810)
  3. ウィルソン (1789–1798)
  4. ブレア (1790–1795)
  5. アイアデル (1790–1799)
  6. T・ジョンソン (1792–1793)
  7. パターソン (1793–1806)
  8. S・チェイス (1796–1811)
  9. ワシントン(英語版) (1798–1829)
  10. ムーア(英語版) (1800–1804)
  11. W・ジョンソン(英語版) (1804–1834)
  12. リビングストン (1807–1823)
  13. トッド(英語版) (1807–1826)
  14. デュバル(英語版) (1811–1835)
  15. ストーリー(英語版) (1812–1845)
  16. トンプソン (1823–1843)
  17. トリンブル(英語版) (1826–1828)
  18. マクレーン (1829–1861)
  19. ボールドウィン(英語版) (1830–1844)
  20. ウェイン(英語版) (1835–1867)
  21. バーバー(英語版) (1836–1841)
  22. カトロン(英語版) (1837–1865)
  23. マッキンレー(英語版) (1838–1852)
  24. ダニエル(英語版) (1842–1860)
  25. ネルソン(英語版) (1845–1872)
  26. ウッドベリー (1845–1851)
  27. グリア(英語版) (1846–1870)
  28. カーティス(英語版) (1851–1857)
  29. キャンベル(英語版) (1853–1861)
  30. クリフォード (1858–1881)
  31. スウェイン(英語版) (1862–1881)
  32. ミラー(英語版) (1862–1890)
  33. デイヴィス(英語版) (1862–1877)
  34. フィールド(英語版) (1863–1897)
  35. ストロング(英語版) (1870–1880)
  36. ブラッドリー(英語版) (1870–1892)
  37. ハント(英語版) (1873–1882)
  38. J・M・ハーラン(英語版) (1877–1911)
  39. ウッズ(英語版) (1881–1887)
  40. マシューズ(英語版) (1881–1889)
  41. グレイ(英語版) (1882–1902)
  42. ブラッチフォード(英語版) (1882–1893)
  43. L・ラマー(英語版) (1888–1893)
  44. ブルーワー(英語版) (1890–1910)
  45. ブラウン(英語版) (1891–1906)
  46. シラス(英語版) (1892–1903)
  47. H・ジャクソン(英語版) (1893–1895)
  48. E・ホワイト* (1894–1910)
  49. ペッカム(英語版) (1896–1909)
  50. マッケナ(英語版) (1898–1925)
  51. ホームズ (1902–1932)
  52. デイ (1903–1922)
  53. ムーディ (1906–1910)
  54. ラートン(英語版) (1910–1914)
  55. ヒューズ* (1910–1916)
  56. ヴァン・ドヴァンター(英語版) (1911–1937)
  57. J・ラマー(英語版) (1911–1916)
  58. ピツニー(英語版) (1912–1922)
  59. マクレイノルズ(英語版) (1914–1941)
  60. ブランダイス (1916–1939)
  61. クラーク(英語版) (1916–1922)
  62. サザーランド(英語版) (1922–1938)
  63. バトラー(英語版) (1923–1939)
  64. サンフォード(英語版) (1923–1930)
  65. ストーン* (1925–1941)
  66. O・ロバーツ(英語版) (1930–1945)
  67. カードーゾ (1932–1938)
  68. ブラック (1937–1971)
  69. リード(英語版) (1938–1957)
  70. フランクファーター (1939–1962)
  71. ダグラス(英語版) (1939–1975)
  72. マーフィー(英語版) (1940–1949)
  73. バーンズ (1941–1942)
  74. R・ジャクソン (1941–1954)
  75. W・ラトリッジ(英語版) (1943–1949)
  76. バートン(英語版) (1945–1958)
  77. クラーク(英語版) (1949–1967)
  78. ミントン(英語版) (1949–1956)
  79. J・M・ハーラン2世(英語版) (1955–1971)
  80. ブレナン (1956–1990)
  81. ウィテカー(英語版) (1957–1962)
  82. スチュワート(英語版) (1958–1981)
  83. B・ホワイト (1962–1993)
  84. ゴールドバーグ(英語版) (1962–1965)
  85. フォータス(英語版) (1965–1969)
  86. T・マーシャル (1967–1991)
  87. ブラックマン (1970–1994)
  88. パウエル(英語版) (1972–1987)
  89. レンキスト* (1972–1986)
  90. スティーブンス (1975–2010)
  91. オコナー (1981–2006)
  92. スカリア (1986–2016)
  93. ケネディ (1988–2018)
  94. スーター (1990–2009)
  95. トーマス (1991–現職)
  96. ギンズバーグ (1993–2020)
  97. ブライヤー (1994–2022)
  98. アリート (2006–現職)
  99. ソトマイヨール (2009–現職)
  100. ケイガン (2010–現職)
  101. ゴーサッチ (2017–現職)
  102. カバノー (2018–現職)
  103. バレット (2020–現職)
  104. K・ジャクソン (2022–現職)
*首席判事も務めた人物
典拠管理データベース ウィキデータを編集
全般
  • VIAF
  • WorldCat
国立図書館
  • ドイツ
  • イスラエル
  • アメリカ
  • ポーランド
学術データベース
  • Scopus
その他
  • IdRef