葦ペン

葦ペンの一例(紀元前40年-紀元後364年ころのもの)パピルス用。米国メトロポリタン美術館所蔵。
葦ペンのさまざまな削り方の例(紀元前40年-紀元後364年ころのもの)メトロポリタン美術館所蔵
葦ペンの一例(580年 - 640年ころのもの)メトロポリタン美術館所蔵。

葦ペン(あしペン、シュメル語:gi-dub-ba、: reed penギリシア語:κάλαμοι kalamoi カラモイ[1])は、1本のアシの茎(藁)を切って削って作られるペン筆記具)。

古くは粘土版楔形文字を書くためにも、パピルスへさまざまな文字を書くためにも用いられ、とても長い歴史を持つ。(経年変化でもろくなりバラバラになりがちなので、後世に残りにくいが)通常の二股のペン先を持つ葦ペンの遺物(実物)は紀元前4世紀以降の古代エジプトの遺跡から発見されている。新約聖書が書かれた時代でも、最も一般的な筆記用具だった。

粘土板用

  • 粘土版用に削った葦ペン。先端が三角形になっており、先端部分を粘土板に、スタンプを押すように、押し込む。
    粘土版用に削った葦ペン。先端が三角形になっており、先端部分を粘土板に、スタンプを押すように、押し込む。
  • 葦ペンで楔形文字を書かれた粘土版(紀元前2600年頃)
    葦ペンで楔形文字を書かれた粘土版(紀元前2600年頃)

パピルス用

中世以降

葦ペンは、羽毛から作られる羽根ペンよりも固く、長期間鋭いペン先を維持できないため、羽根ペンに取って代わられた[3]。それでもなお、葦ペンは太い線を引くことができるためにカリグラフィー用の道具として残った[4]

  • ビザンチン時代でも葦ペンは主要な筆記具のひとつだった。10世紀ころに描かれたと推定されているこの絵でも、机の上に葦ペンとそれを削るためのナイフが置いてある。
    ビザンチン時代でも葦ペンは主要な筆記具のひとつだった。10世紀ころに描かれたと推定されているこの絵でも、机の上に葦ペンとそれを削るためのナイフが置いてある。
  • フィンセント・ファン・ゴッホが葦ペンで描いたスケッチ画(1888年)
    フィンセント・ファン・ゴッホが葦ペンで描いたスケッチ画(1888年
  • 現代人が作った葦ペン
    現代人が作った葦ペン
  • 現代人が作った葦ペンのペン先
    現代人が作った葦ペンのペン先

脚注

  1. ^ 単数形は κάλαμος kalamos カラモス
  2. ^ “Palette de scribe” (フランス語). Antiquites egyptiennes du Louvre. 2015年5月1日閲覧。
  3. ^ Glossary definition from cartage.org
  4. ^ Gottfried Pott - A Look into the World of Calligraphy from Linotype.com

関連項目

  • カラム (筆記具)

外部リンク

  • "A Light Note on the Science of Writing and Inks" (1852): an Arabic manuscript about reed pens