夜の九王

ボルジア絵文書に見える夜の九王。右下から牛耕式に進む

夜の九王[注釈 1](よるのきゅうおう)[注釈 2]は、メソアメリカの暦に見られる9日周期であり、9日それぞれを異なる神が支配する[1]

ナワトル語ではヨアルテウクティン(Yoalteuctin)と呼ばれた。この語は「夜」を意味する yoalli と、「主」を意味する tēuctli の複数形である tēuctin から構成され、夜の主を意味する[要出典]

マヤ

マヤ碑文では補足シリーズ(補助シリーズ)と呼ばれる部分に9日周期の神が記されている。名前が不明であるため、G1からG9までの識別番号で呼ばれる。メアリ・ミラー(英語版)カール・タウベによると、いくつかの神は図像的に同定されている。たとえばG7はおそらくハアブのパクス(パシュ)月の守護神と同じ神であり、G9はパウアトゥン[注釈 3](パワフトゥン)であるという[4][5]

長期暦トゥンは9の倍数なので、必ずG9で終わる[1][4]

チラム・バラムの書』では「ボロン・ティ・ク」(Bolon ti ku、九神)と呼ばれている[要出典]

アステカ

アステカで260日周期の暦(トナルポワリ)を記した書物(トナラマトル)には以下の9神が見える。文献によって多少の違いがある。

  1. シウテクトリ
  2. イツトリまたはテクパトル[6]
  3. ピルツィンテクトリ(英語版)
  4. シンテオトル
  5. ミクトランテクトリ
  6. チャルチウトリクエ
  7. トラソルテオトル
  8. テペヨロトル
  9. トラロック

夜の九王はおそらく9層からなる地下世界と関係がある[4][7]

脚注

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注釈

  1. ^ 訳語は八杉 (1990) p.183 によった
  2. ^ ミラー&タウベ,武井訳 (2000), p.140では夜の王
  3. ^ パウアトゥン (Pauahtun)[2]とは、東西南北にあって天を支えた神々の名でもあり、同様の役割を担う神にはバカブがいる[3]メソアメリカでは、東西南北にいる神が世界を支えていると信じられており、図像には4人揃って、あるいは1人だけで表現されることも、コパンの遺跡の彫刻に見られるように2人が向き合う姿で表現されることもある[2]

出典

  1. ^ a b ミラー&タウベ,武井訳 (2000), p.140
  2. ^ a b ミラー&タウベ,武井訳 (2000), pp.253-254
  3. ^ 『マヤ神話 チラム・バラムの予言』ル・クレジオ原訳・序、望月芳郎訳、新潮社、1981年9月、p.118(「チラム・バラムの予言」原注137)頁。ISBN 978-4-10-515001-3。 
  4. ^ a b c Miller & Taube (1993) p.53
  5. ^ ミラー&タウベ,武井訳 (2000), pp.139-140
  6. ^ Miller & Taube (1993) p.53 による
  7. ^ ミラー&タウベ,武井訳 (2000), pp.140-141

参考文献

  • 八杉 (1990):八杉佳穂『マヤ興亡 : 文明の盛衰は何を語るか?』福武書店〈Fukutake Books〉、1990年。ISBN 4828833218。 NCID BN05153875。https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002058632-00 
  • Miller & Taube (1993):Miller, Mary; Taube, Karl (1993). The Gods and Symbols of Ancient Mexico and the Maya: An Illustrated Dictionary of Mesoamerican Religion. Thames & Hudson. ISBN 0500050686 
    • ミラー&タウベ,武井訳 (2000):ミラー, メアリ、タウベ, カール 編『図説 マヤ・アステカ神話宗教事典』増田義郎監修、武井摩利訳、東洋書林、2000年9月(原著1993年)。ISBN 978-4-88721-421-7。 (上記の日本語訳)