タルゴ

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Talgo III
軌間可変仕様タルゴ車両によって運行されるTEE「カタラン・タルゴ」

タルゴTalgo スペイン語Tren Articulado Ligero Goicoechea-Oriolの略称)は、レンフェで開発された一軸台車連接客車およびそれによる列車の総称であり、これを開発した鉄道車両メーカータルゴ(英語版)株式会社、Talgo, S.A.)の名称、またレンフェがタルゴ客車を用いて運行する一部特急列車のブランド名(es:Renfe Talgo参照)である[1]。タルゴの名称は、スペイン語で「ゴイコエチェア=オリオール軽量連接式列車」の頭文字に由来し、2人の開発者、アレハンドロ・ゴイコエチェアホセ・ルイス・オリオール(スペイン語版)の名前をとっている。

構造

Talgo VIの一軸独立車輪
軌間可変車軸
リェイダに設けられているタルゴ車両用の軌間変更装置

1942年に試作車のTalgoIが製造されて以降、現在までに複数の形式が開発されているが、すべて車輪が一軸独立であるという特徴を持つ[2]。左右の車輪をつなぐ車軸が存在せず、車輪の間に通路などを設けるための空間が確保できるため、車高が非常に低くなっている。

こうしたユニークな特徴を持つTalgoが開発された背景には、スペイン国鉄の抱える独特の問題がある。スペイン国鉄は広軌(1668mm)を採用している[3]ため、曲線区間において内側と外側のレール長の差が、狭軌標準軌のそれと比べて大きい。このため、左右の車輪が同じ速度で回転する通常の台車では、曲線通過時に車輪とレールの摩擦が大きくなり車輪が磨耗しやすい。またスペイン国鉄の路線には山岳路線が多く、必然的に周辺諸国と比較して曲線区間が多く曲線半径も小さい。

このように、タルゴの本来の開発目的は、左右独立車輪採用による車輪磨耗の軽減と、低重心化による曲線通過速度向上であり、「軌間可変」機構の装備を目的に開発されたわけではない。

種類

Talgoは左右独立車輪を採用しているために、車輪が常にレール方向を向くためのステアリング機構を必要とする。

試作車のTalgoIと、TalgoIの実績をもとに1950年に製造され同年7月14日より営業運転開始[4]されたTalgoIIではステアリング機構の構造上、一方向にしか高速走行できず、機関車と客車が固定編成となっており、折り返す際には編成ごと方向転換する必要があったが、1964年のTalgoIII以降は、Zリンクステアリングを採用することにより前後方向とも高速走行可能になり、機関車の付け替え(機回し)のみで折り返すことが可能になった。TalgoIII開発時には、同じ低い車高の専用機関車3000T型(のちの353型)も開発された。

1968年にTEE「カタランタルゴ」として隣国フランスとの乗り入れに対応した軌間可変仕様のTalgoIII-RD(Rodadura Desplazable)が登場した。これが、タルゴが軌間可変車両の代名詞となった理由である。

1980年に現行の振り子仕様Talgo-PENDULAR(TalgoIV)が開発され、Talgoシリーズの主流になった。専用機関車として354型が開発されたが、Talgo-PENDULARは専用機以外の機関車でも牽引出来るようになった。以降のTalgoシリーズはTalgo-PENDULARがベースとなっている。

その後、TalgoV、TalgoVI、TalgoVIIが登場した。

現在では、両端に専用の機関車を連結し、動力集中方式の固定編成となった「TALGO350」がAVEにおいて運行されている。

なお、スペイン以外でも1988年にアメリカ合衆国アムトラック)、1992年にドイツDB)、2011年ウズベキスタンタシュケント・サマルカンド高速鉄道)へ輸出されており、欧米の広い地域でその活躍を見ることが出来る。

  • Talgo III-RD
    Talgo III-RD
  • Talgo PENDULAR
    Talgo PENDULAR
  • Talgo VI
    Talgo VI
  • Talgo VII
    Talgo VII
  • Talgo 350(旧塗装)
    Talgo 350(旧塗装)
  • マドリッド・デリシャスにある鉄道博物館に保存されているTalgo II専用機関車と客車
    マドリッド・デリシャスにある鉄道博物館に保存されているTalgo II専用機関車と客車
  • Talgo III トゥリスタ(二等車)車内
    Talgo III トゥリスタ(二等車)車内

走行区間

Talgo III

Talgo III Rodadura Desplazable

Talgo IV

  • アルビア / アルタリア: サンタンデール - マドリード・チャマルティン駅 - アリカンテ
  • Talgo / アルタリア: ア・コルーニャ / ビーゴ - マドリード・チャマルティン駅 - アリカンテ
  • Talgo: ア・コルーニャ / ビーゴ - マドリード・チャマルティン駅
  • アルビア/Talgo: マドリード・チャマルティン駅 - ビルバオ
  • アルビア: マドリード・チャマルティン駅 - サンタンデール
  • アルタリア: マドリード・チャマルティン駅 - アルバセテ - ムルシア - カルタヘナ

Talgo VI

サルバドール・ダリ号
Mare Nostrum号

Talgo VII

  • アルタリア: アリカンテ - マドリード・チャマルティン駅
  • アルタリア Triana: バルセロナ・サンツ駅 - カディス
  • アルタリア: マドリード・アトーチャ駅 - グラナダ
  • アルタリア: マドリード・アトーチャ駅 - ログローニョ
  • アルタリア: マドリード・アトーチャ駅 - イルン / アンダイエ駅
  • Talgo: マドリード・チャマルティン駅 - アルメリア
  • アルビア: マドリード・チャマルティン駅 - ヒホン(130系)

Talgo 350

その他

アムトラック・カスケーズ
アムトラック・カスケーズ(Talgo VIII)
  • カザフスタン国鉄
カザフスタン国鉄のTalgo200
  • ウズベキスタン国鉄(Afrosiyob)
ウズベキスタン国鉄Afrosiyob
  • サウジアラビア
サウジアラビア高速鉄道のTalgo350
  • インド国鉄
インド国鉄ではスペイン時代のままの姿で運用される
アルゼンチン国鉄が保有するTalgo4

参考

  1. ^ タルゴ客車と機関車を組み合わせた編成で、Talgo以外のブランド名で運行する特急もある。
  2. ^ レンフェ730系用のタルゴ客車編成の両端にある非電化区間運転用の電源車は、機関車側台車のみ2軸台車になっている。
  3. ^ 櫻井寛『今すぐ乗りたい!「世界名列車」の旅』新潮社、2009年、73頁。ISBN 978-4-10-138471-9。 
  4. ^ 交友社『鉄道ファン』1989年5月号(通巻337号)p102
  5. ^ a b フランス国内は「コライユ(Corail)」の種別で運転。なお、かつては、スイスジュネーヴコルナヴァン駅まで運行されていた。
  6. ^ 「Mare Nostrum」はラテン語で「我々の海」、つまり地中海の意。古代ローマ帝国は地中海全域を支配していたためローマ人は地中海をこのように呼んでいた。

関連項目

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、タルゴに関連するカテゴリがあります。
  • タルゴ社公式ホームページ(英語)(スペイン語)
  • Talgo (@talgogroup) - X(旧Twitter)(英語)
  • Talgo Group - YouTubeチャンネル(英語)(スペイン語)
  • スペインの公共交通機関(日本語)


タルゴ製の鉄道車両
客車
動力集中編成
電化区間用
非電化区間用
バイモード車両
  • タルゴ250(スペイン語版)
    • レンフェ730系(スペイン語版)1
機関車
  • トラヴカ(ドイツ語版、スペイン語版)1
 
高速鉄道車両・列車(速度別)
350 km/h以上
アジア
300 - 349 km/h
アジア
欧州
その他
250 - 299 km/h
アジア
欧州
200 - 249 km/h
アジア
欧州
北米
 
各国の高速鉄道網
アジア
欧州
北米
南米
アフリカ
オセアニア
  • オーストラリア(英語版)*
 
車両メーカー
日本
アジア
中国中車
旧南車系
旧北車系
北米、欧州
アルストム

フィアット - GEC†)

ボンバルディア

*:登場予定のもの、計画中のもの - †:過去に存在したもの

列車(TAV)
形式
  • タルゴ(es:Talgo (tren))
  • S100
  • S101
  • S102
  • S103
  • S104
  • S112
  • S114(スペイン語版)
  • S120
  • S121(スペイン語版)
  • S130
  • S490
  • Talgo AVRIL(英語版)
  • S730
  • S330(検測車)(スペイン語版)
種別・名称
  • AVE
  • Avlo(スペイン語版)
  • Lanzadera AVE/Iris/アヴァント
  • AV City(スペイン語版)
  • アルビア(新在直通)
  • レンフェ・インテルシティ(スペイン語版)(新在直通)
  • タルゴ200/アルタリア(新在直通)†
  • ユーロメッド(在来線)
  • インターシティ2000/アラリス(在来線)†
  • アルコ(在来線)†
  • オアリス(英語版)
高速新線(LAV
インフラ
  • ASFA(英語版)
  • LZB
  • ETCS
  • グアダラマトンネル(スペイン語版)
  • パハーレストンネル(スペイン語版)
  • サンツ=ラ・サグレラトンネル(スペイン語版)
  • ペルトゥストンネル(英語版)
  • アトーチャ・チャマルティン鉄道トンネル(スペイン語版)
関連組織・企業
インフラ
運行
メーカー
国外展開
  • トルコの旗TCDD HT65000
  • ウズベキスタンの旗アフラシャブ(スペイン語版)
  • サウジアラビアの旗TALGO 350 SRO(スペイン語版)
  • ロシアの旗Стриж(ストリージ)
  • アメリカ合衆国の旗カスケーズ
事故
† - 過去に存在したもの
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  • チェコ